陽明門ようめいもんをくぐって正面しょうめん,全体に白っぽい印象いんしょうの門が目に入ってきます。それが唐門からもんです。間口まぐち3m,おくき2mの小さな門ですが,東照宮でもっと重要じゅうような本社の正門せいもんです。江戸時代には,「御目見得おめみえ」(将軍に拝謁はいえつできる身分)以上の幕臣ばくしんや大名だけが使えました。唐門には611もの彫刻ちょうこくほどこされていて,中でも人物の彫刻は6体64人います。


正面から見た唐門

「舜帝朝見の儀」

その中のひとつ「舜帝朝見しゅんていちょうけん」の彫刻は,正月元日に,舜帝がたくさんの役人達やくにんたちから新年のあいさつを受けている場面ばめんを表したものです。
舜帝は堯帝ぎょうてい没後ぼつご禅譲ぜんじょう(真に能力のあるものに政権をゆずること)によって政権についた人物です。中国では,堯帝,舜帝の二代がもっともよく国がおさまった理想りそうの時代といわれています。彫刻の舜帝の顔をよく見てください。家康公とていませんか。これは,下絵を描いた絵師が舜帝と家康公を似せて描いたと思われます。そこからこの彫刻は,家康公こそが舜帝にすべき帝王ていおうであり,徳川幕府が目指すべき政権は舜帝の治世ちせいである,との考えを表しているものと解釈かいしゃくできます。
現在の平成の年号はこの舜帝が残した「内平外成」の言葉からとったものです。内平外成とは「内平うちたいららかに外成そとなる」といって,舜帝が優秀ゆうしゅう人材じんざい登用とうようして政治に力を入れた結果,国がよくおさまったことを言います。

【その他の彫刻】
唐門の屋根下には「八仙人はちせんにん」「竹林ちくりん七賢人しちけんじん」「七福人しちふくじん」など,向かって右の柱には昇龍のぼりりゅう左に降龍くだりりゅうが彫られています。それぞれに重要じゅうような意味をもち,願いをもって作られたものなので調べてみるとおもしろいと思います。新しい発見があるかもしれません。

福をもたらす「七福神」

屋根上のつつがといわれる霊獣れいじゅう
実際じっさい唐獅子からじし

唐門や陽明門(42体156人)には,理想的りそうてきな政治のあり方や,人間としての生き方を教えてくれる彫刻がたくさん彫られているのです。